キッチンの除菌や漂白のためにキッチンハイターの薄め液を作るとき、毎回濃度を計るのが面倒に感じたことがある人は多いと思います。
休日にまとめて薄めておき、ペットボトルやスプレー容器に入れて必要なときに使えたら楽だろうと考えるのは、効率化としては自然な発想。
でも、この方法、メーカー案内では、この作り置きははっきりと避けるよう案内されているんですよ。
「時間が経つと効果がなくなるから」だけじゃない。
薄め液の主成分である次亜塩素酸ナトリウムは、時間の経過とともに分解が進み、濃度が下がっていく性質を持っていて、これ自体はよく知られた話。
なので「薄めたら早めに使い切るべき」というのは理解できますよね?
医療や介護の現場向けの資料を見ると、遮光した密閉容器に入れ、一定以上の濃度を保てば、希釈後でも一カ月ほど大きな濃度低下なく保存できるという運用もあるようで、効果の持続だけが問題であれば、家庭でも遮光した容器を使うなどの工夫で対応できそうに思えてきますよね。
でも、家庭用のキッチンハイターについての案内を読むと、保存を避けるべき理由には、効果の低下とは別の問題が含まれているんです。
それが、薄め液を入れた容器の材質によっては、腐食が進んでもれたり破裂したりする恐れがあるのだそうで、さらにこの危険は漂白剤の種類によって異なるんです。
液体タイプの塩素系漂白剤は、容器そのものが腐食していく一方、粉末タイプの漂白剤を溶かした液は溶かす過程で発泡するため、密閉すると内部の圧力で容器が破裂することがあって、効果が落ちることと、容器が壊れることは、別のところで起きている危険だということになります。
さらにもう一つ、効果の有無ともまったく無関係に起きているリスクがあって、薄め液をペットボトルやコップなどの飲み物用の容器に移し替えたことによる誤飲事故。
国民生活センターには、洗剤や殺虫剤などを飲料用のペットボトルに移し替えたことによる誤飲事故の報告が寄せられているようで、中には化学性肺炎など重い症状に至った例も含まれているのだとか。
日本中毒情報センターでも、漂白剤を入れて置いていたコップや水筒の中身を家族が誤って飲んでしまう事故が繰り返し起きているとのことで、これは薄め液の効果が残っているかどうかや、容器が腐食しているかどうかとは関係なく、見た目が飲み物と区別しにくいことから起きる事故でもあります。
こうやって問題を紐解いていくと、作り置きを避けるべき理由は一つではなく、性質の異なる三つの問題が重なっていることが見えてきます。
効果が落ちるという化学的な変化、容器が腐食や発泡で壊れるという物理的な危険、そして飲み物と間違えて口にしてしまうという事故のリスク。
この三つは発生する条件も対策も異なり、「早めに使い切る」というだけでは、後の二つのリスクに対応することができません。
医療施設のように遮光容器と厳密な期限管理で濃度を保てたとしても、容器の腐食や誤飲のリスクは別に残り続けてしまいますからね。
そう考えると、家庭で薄め液を扱うときに意識するのは、使い切るタイミングよりも、どんな容器に入れ、どこに置いておくかということになりますね。
薄め液は塩素系薬剤に耐えられる容器を使い、その日のうちに使い切って処分すること、そして間違っても飲み物用のペットボトルやコップに入れないことが、効果の心配とは別の意味で欠かせない習慣になります。
まとめて作っておく手間を省きたいという気持ちは自然なものですが、その一手間を惜しんだ先にあるのは、効果が薄れた程度の話にとどまらないということがわかりましたね。